記事を自社に当てはめる前に、4問で最初に着手すべきAI活用テーマを確認できます。
結論:建設DXは現場データの蓄積と全員参加から始まる
建設業においてAI活用を軌道に乗せるためには、高度な予測モデルの構築をいきなり目指すのではなく、日々の現場書類、品質チェック、協力会社とのやり取りをデータ化することが優先されます。
経済産業省が発行した「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」では、山形県米沢市の総合建設会社である後藤組のDX推進事例が取り上げられています。後藤組の取り組みでは、現場から経営層までが一体となって参画する「全員DX」を掲げ、ノーコードツールを用いた業務アプリの作成や、生成AIおよび機械学習を組み込んだ独自アプリの活用が進められています。
この事例から中小規模の建設会社が取り入れるべき視点は、デジタル化やAIの導入を特定の一部門だけに閉じ込めないという点です。現場で発生している細かな不便を解消するアプリを作り、そこで蓄積されたデータを次の業務改善へとつなげていく仕組みを整えることで、AIの導入が机上の空論にとどまらず、現場の実質的な改善に直結していきます。
後藤組のDX事例にみる取組の要点
後藤組の公開事例から読み取れる要点は、現場社員による自発的なアプリ開発環境と、先進技術の段階的な実務適応にあります。
全員DXと現場主導のアプリ作成
後藤組では、kintoneやLooker Studioといったノーコードツールを活用し、現場の社員自らが実務に必要な業務アプリを作成する体制を整えています。専門の開発会社へ都度依頼する形ではなく、現場の課題感を最も理解している担当者が直接改善に関わることで、実情に即した仕組みが形作られています。
現場社員が改善のアイデアを出し、経営層がそれを受け止め、DXチームが技術面や進行を支える連携体制が機能している点が、この「全員DX」の基盤です。
生成AIや機械学習の独自アプリへの組み込み
ノーコードツールによる日常業務の電子化に加え、後藤組では生成AIや機械学習を組み込んだ独自アプリの活用も進められています。現場や事務のデータを蓄積したうえで、それらをAI技術と連携させることによって、データ利活用の幅を広げている点が特徴です。
単に市販のチャットサービスを利用するだけに留まらず、自社の実務の流れに組み込んだ形でAIを活用するアプローチが採られています。
事例で確認できる導入成果
公開資料で挙げられている主な成果は以下の通りです。
- 残業時間の削減
- 工事現場における品質チェックシートのデジタル管理
- 契約、発注、請求をはじめとする事務手続きのデジタル化
- 若手社員が活躍しやすい業務環境の整備
現場の品質管理からバックオフィスの事務手続きまで一貫してデジタル化を進めた結果、業務効率化や働きやすさの向上につながっていることが示されています。
編集部の示唆:中小建設業が学ぶべき運用の視点
ここでは、後藤組の事例を踏まえ、一般の中小建設業がDXやAI導入を検討する際に留意すべき視点を整理します。
ツール先行ではなく課題の整理を起点にする
DXを推進しようとする際、最新のAIツールや話題のクラウドシステムを導入すること自体が目的化してしまうケースが少なくありません。しかし、後藤組の事例が示しているように、本質的な成果を生み出すのは「現場で何が滞っているのか」「どの手続きに手戻りが多いのか」という現場起点の課題意識です。
業務のどこに無駄があり、どの情報を共有できれば手待ち時間が減るのかを洗い出し、それに適した手段としてノーコードツールやAIを選択する姿勢が重要になります。
経営層の受け皿とDX担当の伴走
現場主導で改善を進める場合、現場に丸投げするだけでは取り組みが頓挫しやすくなります。現場から上がってきた「ここを変えたい」という提案に対して、経営層が迅速に理解を示して承認すること、そして専門的な知見を持つDX担当者が操作や設計を支援することが不可欠です。この三者の循環が成立して初めて、現場定着と改善の継続が可能になります。
自社で試す手順:現場記録からAI活用へつなげる段階的アプローチ
中小建設業が後藤組のようなステップを目指すにあたり、自社で試す際の実務的な手順を解説します。
ステップ1:日々発生する現場記録のデジタル化
最初に着手しやすい領域は、毎日の現場管理で発生する手書きの記録業務です。
- 危険予知活動(KY活動)の電子記録
- 工事現場の品質チェックシートの入力と集約
これらを紙のバインダーからノーコードアプリ等を用いたデジタル入力へと移行します。写真の添付やチェック項目の統一を行うだけでも、書類の回収や保管の手間が省け、現場と事務所の間での情報共有が早まります。
ステップ2:事務手続きと外部共有情報の見える化
現場の基本記録が電子化された後は、現場を取り巻く関連業務へと対象を広げます。
- 生コン車の搬入状況や協力会社との共有情報の可視化
- 契約、発注、請求に関わる書類のやり取りとステータス管理
協力会社との連絡や事務手続きが電話や紙の伝票に依存していると、行き違いや確認待ちの時間が生じやすくなります。ダッシュボードや共有ツールを活用して状況を見える化することで、連絡の重複を減らし、事務処理全体のリードタイムを短縮できます。
ステップ3:蓄積データを活用した生成AIによる業務補助
ステップ1とステップ2で日常業務の形式がそろい、データが一定量蓄積された段階で、生成AIや機械学習の導入を検討します。
テキストやチェック項目として保存された記録をもとに、以下のような補助作業をAIに担わせることが現実的な選択肢となります。
- 過去の類似工事におけるチェックシートからの注意点抽出
- 安全記録や報告書の下書き作成と要約
- 契約書や発注書の確認作業における抜け漏れチェック
データの下地がない状態でAIを導入しても活用法が見出せませんが、日常記録が電子化されていれば、AIが参照すべき情報源として機能するようになります。
運用上の注意:建設現場でAI・デジタル化を進める際の留意点
建設業においてAIやノーコードアプリの実務運用を定着させるためには、業界特有の安全責任と現場の作業負担を考慮する必要があります。
責任分界点の明確化と人の判断の担保
建設業では、施工の安全、品質、契約条件の履行に関して重い責任が伴います。生成AIは文章の要約やドラフト作成に長けていますが、現場ごとの固有条件や安全基準を完全に把握して判断できるわけではありません。
そのため、AIの役割はあくまで「下書き作成」「参考情報の整理」「チェック項目の抜け漏れ確認」といった補助的な位置づけに限定することが推奨されます。最終的な現場指示、施工計画の決定、契約書の締結判断などは、有資格者や現場責任者が内容を確認したうえで行うというルールを徹底する必要があります。
入力負担を増やさないデータ再利用の設計
現場で最も警戒されるのは、「デジタル化によってかえって入力作業が増える」という事態です。現場監督や職人が同じ内容を複数のアプリや報告書に二重入力するような運用設計では、ツールは定着しません。
紙を単に画面へ置き換えるのではなく、現場で一度入力したデータが日報、発注管理、請求処理、品質確認シートへ自動的に転記・再利用されるような連携構造をあらかじめ考慮しておくことが重要です。入力の手間が減り、本来の現場管理に集中できる実感が得られてこそ、社内への定着が進みます。
参考にした公開事例
参考情報: 経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」に掲載された後藤組の事例。中小企業が自社のリソースをもとに検討しやすいDX推進およびAI活用の要点を確認できます。
次に読む記事
建設・物流分野の全体像や着手ポイントを広く確認したい場合は、建設業と物流業のAI導入はどこから始めるべきかを業務別に整理する をご参照ください。
土木現場における測量や現場データの利活用事例については、池田組の土木DX事例|ドローン測量と現場データがAI活用の土台になる で詳しく取り上げています。
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まず診断で対象業務・ルール・KPI・PoC設計の現在地を整理し、必要であれば診断結果をもとに30分相談できます。
公式情報、運用チェックリスト、実務メモをもとに、AI導入の判断に必要な要点を確認できます。 最終確認日は 2026/4/21 です。 運営会社と編集方針については 運営情報 と 編集部プロフィール にまとめています。
参考情報
この記事の制作・確認時に参照した情報です。制度、セキュリティ、個人情報、医療、法務、会計、採用など更新性や判断責任が高いテーマでは、公式情報・一次情報を優先します。
- 経済産業省: 中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025
DXセレクション2025選定企業レポートを含む、中堅・中小企業向けのDX推進手引き。建設、製造、不動産などの実名事例を掲載している。
確認日: 2026-04-21 - 業種別AI導入の記事で押さえる視点
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確認日: 2026-04-20 - AI導入前に確認したい社内ガバナンス項目
個人情報、顧客情報、確認責任、記録保存、利用ルールを最低限押さえるための運用カード。
確認日: 2026-04-20
よくある質問
建設業でいきなり生成AIを入れても効果は出ますか?
単独導入より、品質チェック、日報、発注、請求などの情報を先にデジタル化し、AIが参照できる状態を作る方が効果を出しやすいです。
現場社員がアプリを作る運用は現実的ですか?
全員が高度な開発をする必要はありません。現場課題を理解する担当者がノーコードで小さく改善し、DX担当が支援する体制が現実的です。
協力会社も巻き込むべきですか?
契約、発注、請求、現場共有は協力会社との接点が多いため、社内だけでなく取引先の負担も見て設計する必要があります。