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建設関連事業におけるAI活用と内製化の結論
建設関連事業や資材流通の現場でAI活用を軌道に乗せるには、営業、受発注、在庫、原材料判断の各工程をデータとして記録し、蓄積することが出発点になります。
経済産業省のDXセレクション2024選定企業レポートおよび株式会社ヤマサの公開情報によると、長野県松本市に本社を置く同社は、IT人材の採用やデジタル推進課の新設を通じて内製化体制を構築しました。同社は建設関連事業、燃料、食糧、ドライアイス、デジタル事業などを展開しており、建設資材営業活動ツール、セメント受発注・在庫管理システム、原石AI判別システムなどの開発に取り組んでいます。
建設業界では元請けや施工現場のDXに注目が集まりがちですが、資材や原材料を供給する事業者においても、データの整理とAI活用によって業務負荷を軽減できる余地があります。
公開事例に見るヤマサの取り組みと特徴
内製化体制への移行背景
ヤマサの公開情報では、かつてシステム開発をITベンダーに依存していたことで生じていた価格交渉力や開発スピードの課題が背景として挙げられています。現場の要望に応じた改修を迅速に行い、コストの適正化を図るため、同社は社外からIT人材を採用し、デジタル推進課を新設して内製開発を進める体制へ移行しました。
4つの推進領域と建設関連の取り組み
同社のDX推進方針は、以下の4領域に整理されています。
- 共通業務
- 固有業務
- 研究開発
- 知財化
建設関連事業においては、現場の営業担当者を支える建設資材営業活動ツールの導入や、セメント受発注・在庫管理システムの構築が進められています。日々の受発注や在庫状況の把握をシステム化することで、資材流通に伴う業務の整理が図られています。
原石AI判別システムと知財化
同社の取り組みで特徴的な要素が、原石AI判別システムの開発と特許取得です。単に既存のソフトウェアを導入して業務を効率化するにとどまらず、現場における原材料の判断業務に対して自社でAI技術を適用し、研究開発から知財化へとつなげています。
現場のコア業務に即した判断技術を自前で形にし、権利化まで見据えて展開している点は、中堅・中小企業における先端技術活用の参考になります。
中小企業がまねしやすい着手の順番
ヤマサの事例を踏まえ、同規模の事業者が同様の取り組みを進める際の実務的なステップを整理します。
ステップ1:営業と受発注の情報を一元化する
最初に取り組むべき領域は、営業活動と受発注業務の情報整理です。建設資材の取引では、顧客ごとの問い合わせ内容、見込み案件、見積条件、納期、在庫状況、現場への配送条件などが担当者ごとに属人化しがちです。
これらの情報を記録・共有できる環境を整えることで、営業担当者の状況確認や受注可否の判断にかかる時間を削減できます。高度なAIを導入する前に、日常業務でやり取りされる前提条件をデジタルデータとして残す運用が不可欠です。
ステップ2:現場の判断基準と例外対応を記録する
次に、在庫管理や原材料の品質確認など、現場の判断が求められる業務をデータ化します。最初から自動判定の仕組みを作ろうとするのではなく、熟練者がどのような要素を見て合否や仕分けを判断しているのかを言語化します。
判断時の条件、確認結果、判断を誤りやすい境界条件などを記録として残すことで、将来的なAIモデル開発に向けた教師データが蓄積されます。
ステップ3:内製と外注の切り分けを明確にする
体制構築においては、すべての開発を社内だけで抱え込む必要はありません。現場の細かな画面修正や日常的な運用改善は、小回りの利く内製チームが適しています。
一方で、基幹システムとの連携、セキュリティ設計、高度な機械学習モデルの構築、特許出願や契約実務などの領域は、外部の専門機関やベンダーの支援を活用する方が手戻りを防げます。自社が保持すべき知見と外部に頼る部分の境界をあらかじめ定めておくことが重要です。
編集部の示唆:資材・原材料ビジネスにおけるDXの本質
ここからは、ヤマサの事例を踏まえて編集部が実務向けに整理した示唆を述べます。
建設資材や燃料などを扱う専門商社・卸売業では、取り扱う品目の多さと取引条件の複雑さが業務負担を生み出す主な要因です。こうした環境でAI活用を目指す場合、ツール選びから入るのではなく、商流のどこに判断のボトルネックがあるかを特定することが近道になります。
現場の作業者が日々行っている選別作業や手配業務を分解し、ルール化できる定型作業と、知見が必要な非定型作業に切り分けます。定型業務を受発注システム等で自動化・省力化し、非定型業務には画像認識などのAI判別を補助として適用していくアプローチが適しています。
また、単なる社内効率化で終わらせず、確立した独自技術を知財として権利化し、自社の競争力として位置づけていく姿勢も、事業価値を高めるうえで有効な視点です。
自社で試す手順
自社において受発注や判断業務のDXを進めるための標準的な検討手順を整理します。
- 現状の連絡手段とデータ形式の棚卸し 電話、FAX、口頭で行われている資材の手配依頼や在庫確認の頻度を把握し、文字や画像として保存されている割合を確認します。
- 判断プロセスの可視化と記録フォームの統一 原材料の検品や資材の選別作業において、担当者が確認しているチェック項目を統一フォーマットに書き出します。
- 小規模なプロトタイプによる検証 まずは限定された品目や一部の取引先を対象に、共通の営業管理ツールや受発注システムを試験導入し、運用の定着度を確かめます。
- 判定モデルの試験と改善サイクルの確立 蓄積された画像や判定データをもとに判定支援を試行し、現場の実態とズレがないかフィードバックを受けながら精度を調整します。
運用上の注意
AIツールや業務システムを現場に定着させる過程では、いくつかの運用課題に対処する必要があります。
データの欠損と質のばらつき
過去の業務履歴がメモ程度しか残っていなかったり、担当者によって入力フォーマットが異なっていたりすると、AIの学習や分析に十分な成果が得られない可能性があります。導入初期はツールの多機能さよりも、必須項目の入力漏れを防ぐシンプルな運用を徹底することが求められます。
人による確認体制と免責ルールの維持
建設資材や原材料の判定ミスは、施工品質や現場の安全性、契約不適合責任に直結する恐れがあります。AIによる判定結果はあくまで担当者の補助情報として位置づけ、最終確認は責任者が行い、その承認履歴をログとして保存する運用フローを崩してはなりません。
まとめ
ヤマサの取り組みは、ITベンダーへの依存から脱却して内製化を進め、営業・受発注・在庫・原材料の判別という現場に密着した課題をデータとAIで解決していく実践例といえます。
自社でDXやAI導入を推進する際も、まずは日常の商流データを確実に残す体制を整え、内製と外注を適切に分担しながら、無理のない範囲で小さく試していく姿勢が求められます。
参考にした公開事例
本記事は、経済産業省が選定した優良事例レポートおよび株式会社ヤマサの公式発表情報を参考に構成しています。
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参考情報
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よくある質問
建設資材業でもAI活用はできますか?
できます。営業履歴、受発注、在庫、原材料判定のように、繰り返し判断が発生する業務をデータ化するとAI活用につなげやすくなります。
AI判別システムは中小企業でも必要ですか?
最初から高度な画像判定を作る必要はありません。まずは判断結果と条件を記録し、再利用できるデータをためることが先です。
内製化は外注より優れていますか?
必ずしもそうではありません。現場との距離が近い業務は内製が向く一方、セキュリティや基幹連携は外部支援を使う判断も必要です。