記事を自社に当てはめる前に、4問で最初に着手すべきAI活用テーマを確認できます。
結論:商品名を知らない顧客を用途や悩みで導く
商品点数が多いECサイトにおいて、訪問者が必ずしも正確な商品名や型番を把握しているとは限りません。特に専門性の高いアイテムを扱うサイトでは、商品名を知っている特定層しか目的のページにたどり着けず、多くの顧客が検索の段階でつまずき離脱してしまう傾向があります。
こうした課題に対し、「商品名を知っている人だけが探せる状態」から「用途や悩み、やりたいことから直感的に探せる状態」へとサイト構造を再設計することが有効な打開策になります。
本稿では、株式会社ハセ・プロが運営する「ハセプロ オンラインショップ」におけるawoo AIの導入事例をもとに、多数の商品を抱えるECサイトがAIを活用して回遊性と転換率を向上させるための実務ポイントを整理します。
ハセプロ オンラインショップの公開事例と成果
1万1,000点の商品群における探索の課題
awooの公開事例によると、自動車関連パーツなどを幅広く手がける株式会社ハセ・プロの「ハセプロ オンラインショップ」では、取り扱い商品が1万1,000点にのぼります。この膨大な商品点数ゆえに、顧客がサイト内で自分の欲しい商品を見つけ出すことが難しく、購入に至る前にサイトから離脱してしまうという課題を抱えていました。
多品種を揃えるECサイトでは、品揃えが充実するほどカテゴリ分類が複雑化し、キーワード検索の精度や顧客のリテラシーに依存する度合いが高くなります。目当ての製品が確かに存在しているにもかかわらず、検索窓に打ち込む言葉が一致しないために「取り扱いなし」と誤認されたり、探す手間がストレスとなって離脱につながったりする事態が生じていました。
awoo AIによる自動タグ生成と成果
ハセプロ オンラインショップでは、商品特徴からハッシュタグを自動生成するツールであるawoo AIを導入しました。商品データをもとに特徴や用途を表すタグを付与し、顧客が求めている状態や目的に応じて商品を横断的に探せる仕組みを整えています。
公開されている導入効果としては、以下の実績が紹介されています。
- サイト回遊率:3.4倍に伸長
- CV率(コンバージョン率):2.9倍に伸長
商品点数が非常に多い大規模サイトであっても、顧客の検索意図や探索行動に寄り添ったタグ導線を設けることで、閲覧ページ数が増加し、最終的な購買行動へ結びつきやすくなることが確認できます。
「#貼る」「#伸びる」が探索に機能する背景
ハセプロの事例において注目すべき点は、「#貼る」「#伸びる」といった、一見すると抽象的で感覚的なキーワードが商品探索において成果を挙げている点です。
車内装飾用のシートや各種保護フィルムなどのアイテムを探す際、顧客の頭の中にあるのは「正式な商品分類名」ではなく、「この部分にシートを貼りたい」「局面に合わせて伸びる素材が欲しい」といった具体的な作業内容や期待する機能です。「#貼る」「#伸びる」といった動詞や性質のハッシュタグが存在することで、顧客は専門知識を必要とせずに、自身の目的に合致する候補商品へ素早くアクセスできるようになります。
編集部の示唆:専門用品ECで探索離脱が起きる理由
ハセプロの事例をもとに、一般的なEC運営においてなぜ探索起因の離脱が発生しやすいのか、実務的な背景を考察します。
正式名称・型番と顧客の語彙のギャップ
専門パーツ、アクセサリー、工具、趣味用品などの分野では、メーカー側の管理体系と一般消費者の認識との間に大きな隔たりが存在します。管理側は「商品名」「製品コード」「品番」「規格」で整理しますが、顧客側は「何が欲しいか」「何に使いたいか」という目的意識しか持っていないケースが珍しくありません。
この語彙のギャップが埋まらないままキーワード検索に頼った設計にしていると、本来は合致する商品があるにもかかわらず、検索結果がゼロ件になったり意図しない一覧が表示されたりして、顧客を逃す要因になります。
カテゴリ階層による回遊の分断
大規模ECで一般的な「大カテゴリ > 中カテゴリ > 小カテゴリ」という階層ツリー構造は、商品を整理・保管する上では合理的ですが、顧客の自由な探索を制限してしまう側面があります。
階層が深くなるほど別の階層にある関連商品との行き来が難しくなり、顧客はいったん上位の階層に戻ってから別のカテゴリを辿り直さなければなりません。この探索コストの高さが、結果としてサイト内回遊の中断や併せ買いの機会損失を招きます。
AIによって特徴や用途を抽出したタグを配置することは、硬直化したカテゴリツリーの枠組みを横断するショートカット導線をサイト全体に網の目のように張り巡らせる効果を持ちます。
自社で試す手順:AIタグ活用を段階的に進める方法
自社のECサイトでハッシュタグを活用した探索改善に取り組む際、どのような手順で検討を進めるべきか、一般的な実務フローをまとめます。
手順1:検索ログと離脱ポイントの分析
最初に取り組むべきは、サイト内検索ログの詳細な確認です。具体的には以下の事象を洗い出します。
- 検索結果が該当なしとなっている「検索ゼロ件キーワード」
- 検索結果ページを表示した直後に離脱しているケース
- カタカナ・ひらがな・英語などの表記ゆれ
- 一般名称と型番の打ち間違い
- 想定と異なるカテゴリでの検索試行
顧客がどのような言葉で商品を探そうとして失敗しているのかを把握することで、補強すべき導線や付与すべきキーワードの傾向が見えてきます。
手順2:用途・目的ベースの語彙整理
続いて、自社の商品群がどのような「用途」「悩み」「使用行動」に対応しているかを整理します。
カタログ上のスペック表記をそのまま転記するのではなく、顧客の目線に立った表現へ置き換える作業が求められます。ハセプロの事例で見られた「貼る」「伸びる」をはじめ、「傷を防ぐ」「収納する」「軽くする」といった、顧客の行動や解決したい困りごとに直結する言葉を選定していきます。
こうした言葉をAIに学習させたり、自動抽出の対象として定義したりすることで、商品ページから別の関連商品へと遷移しやすい基盤を作ります。
手順3:カテゴリを横断するタグの設計とテスト
語彙の方向性が定まったら、カテゴリをまたいで同一のタグで紐づけられる構造を設計します。
同一カテゴリ内の絞り込みだけでは、ついで買いや潜在ニーズの喚起は期待しづらい傾向があります。例えば「保護する」という共通タグによって、異なる素材や別パーツのアイテムが並んで提示される環境を作ることで、サイト訪問者は偶発的な出会いを楽しみながらサイト内を深く回遊できるようになります。一部の代表的な商品群から試験的に導入し、表示回数やクリック状況をモニタリングしながら適用範囲を広げていく進め方が堅実です。
運用上の注意:タグ管理と誤購入防止のポイント
タグ導線は利便性を高める一方で、無計画に展開すると運用が破綻するリスクを孕んでいます。導入・運用における実務的な留意点を整理します。
タグの増殖と陳腐化を防ぐ定期メンテナンス
AIによって自動生成を行う場合でも、完全にシステムへ任せきりにすることは避けるべきです。商品点数が多いサイトほど、生成されるタグの種類が爆発的に増え、サイト内の導線が散らかってしまう懸念があります。
類義語や表記ゆれによって似た意味のタグが乱立すると、ひとつのタグに含まれる商品数が分散し、一覧ページの魅力が損なわれます。似た意味のタグを統合するルールを定め、廃番商品や長期間在庫がない商品に紐づいたタグを定期的に整理する保守運用プロセスを業務として組み込んでおく必要があります。
適合条件・型番の確認導線の確保
パーツや専用機器などの商材では、「使えそうだから」という感覚的な判断だけで購入されると、型番不一致による返品やクレームに直結します。
AIタグはあくまで顧客を適切な商品候補へ引き合わせるための「発見の入り口」として位置づけ、購入判断の最終段階では厳密な適合確認ができる構成にしなければなりません。詳細な対応条件、サイズ、取り付け制限、注意書きなどは商品ページ上の目立つ位置に分かりやすく明記し、感覚的なタグ探索と正確なスペック確認の両立を図ることが重要です。
AIに委ねる領域と人間が担保する精度の切り分け
膨大な商品データから特徴語を網羅的に拾い上げ、タグとして関連付ける作業はAIが得意とする領域です。一方で、その言葉がブランドの世界観に即しているか、顧客にとって誤認を招く表現になっていないか、法的な問題や不適切な紐づけがないかを判断する責任は運用担当者にあります。
AIの自動処理によって探索負荷を下げる仕組みを構築しつつ、生成結果の定期監査や除外ルールの設定など、人間側が品質を担保するガバナンス体制をあらかじめ整えておくことが望まれます。
まとめ
ハセプロ オンラインショップの事例は、商品点数が多いECサイトにおいて、商品名に依存しない「行動や悩み起点のタグ設計」が回遊率とCV率の改善に大きく寄与することを示しています。
AIハッシュタグは単なるデザイン上の装飾ではなく、顧客の語彙と商品の間にあるギャップを埋め、目的の商品にたどり着くまでの労力を軽減するための実務的な業務改善施策です。自社のECサイトで商品点数の多さが顧客の離脱要因になっている場合は、検索ログの点検から着手し、直感的に探せるタグ導線の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考にした公開事例
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参考情報
この記事の制作・確認時に参照した情報です。制度、セキュリティ、個人情報、医療、法務、会計、採用など更新性や判断責任が高いテーマでは、公式情報・一次情報を優先します。
- awoo: ハセプロ オンラインショップ導入事例
awooが公開した、ハセプロ オンラインショップでのAIハッシュタグによる商品検索導線改善事例。
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よくある質問
商品点数が多いECで最初に見るべき課題は何ですか?
検索ゼロ件、検索後離脱、カテゴリ回遊の少なさ、同じ問い合わせの多さを見ると、商品探索の詰まりを見つけやすいです。
AIタグはSEOタグと同じですか?
同じではありません。SEO向けの語だけでなく、顧客がサイト内で商品を探すための用途、悩み、利用シーンを含めて設計します。
導入前に必要なデータは何ですか?
商品名、カテゴリ、対応車種やサイズ、素材、使い方、関連商品、検索キーワード、問い合わせ履歴を確認できます。